正しい杖の使い方Ⅰ

正しい杖の使い方Ⅰ

今回は杖の正しい使い方に関して紹介させていただきます。足が不自由な方にとっては命綱ともいえる杖ですが、使い方を誤れば安全のために使用している杖がとても危険なものとなってしまいます。今回は、安全な使用方法についてのポイントを説明したいと思います。

杖を持つのはどっち?杖は※健側で持ちます。それは通常の自然な歩き方を変えずに歩き、バランスをよくするためです。自然な歩き方では、右足を出した時に左手が前に出て、左足を出した時に右手が前に出ます。この順番で行くと、杖と健側の足が同時に出ることはありません。こうすることでバランスを保つことができるのです。 ※体の半身・手足の片側に麻痺や障害、怪我を負っている人の、健康な側を健側、その反対を患側と呼びます。

(1)杖の持ち方

① T字杖
縦棒部分を人差し指と中指で跨ぐようにして握ります。もしくは人差し指を縦棒に沿わせるように握ります。T字部分の片側だけを握ると、体重がうまく杖に乗らず、転倒しやすくなります。

② 4点杖
両手用もありますが、ほとんどが右手用・左手用に分かれています。持ち手に注意が必要です。

③ 松葉杖
両脇に杖の柄の部分を入れ、中央部分にあるグリップをしっかりと握ります。脇に体重はかけないように使用します。体重をかけてしまうと、脇の下の神経を圧迫し、血行が悪くなってしまいます。脇と松葉杖の間に少し隙間ができるようなサイズのものを使用します。

④ 肘支持型杖
杖前方にあるグリップをしっかりと握り、前腕部を横木にしっかりと乗せマジックバンドで固定します。前腕部が横木の中央にしっかりと乗っていることが大切です。マジックテープで留めているため、横木から外れることはないですが、杖の先端にうまく体重がかからず、滑る恐れがあります。

⑤ ロフトランドクラッチ
前腕を杖に固定するカフをつけ、その下にあるグリップをしっかりと握ります。

(2)杖歩行の方法

① T字杖
「3点歩行」と「2点歩行」があります。「3点歩行」は杖→患側の足→健側の足の順番で前に出していきます。「2点歩行」は杖と患側の足を同時に前に出し、そのあと健側の足を前に出します。杖・患側の足(同時)→健側の足となります。「2点歩行」は歩く速度は速くなりますが、ある程度の慣れが必要なため、はじめは「3点歩行」をお勧めします。

② 4点杖
基本的な順番はT字杖と同様です。4本ある底の足の後方2本の足を先に地面につけ、そのあと前方2本を地面につけ、前に進みます。

③ 松葉杖
通常2本セットで使用します。歩行方法にはいくつかあり、症状により変わります。

「4点歩行」
右(左)杖→左(右)足→左(右)杖→右(左)足の順番で前に出します。常に3点が床に接地している状態なので安定しています。

「3点歩行」
先に両方の松葉杖をややハの字にして前に出します。脇を絞め、グリップ部分で体重を支えます。次に健側の足を前に出します。症状の改善により、この方法から徐々に患側の足に荷重をかけていくようにし、松葉杖と患側の足を同時に前に出すようにします。

「2点歩行」
右(左)杖・左(右)足→左(右)杖・右(左)足の順番で前に出します。歩行速度は速くなりますが、バランスはあまりよくありません。

「引きずり歩行」
両方の松葉杖を前に出し、片方ずつ足を引きずりながら前に出します。
「大振り歩行」
両方の松葉杖→両足(同時)の順番で前に出します。このとき両足は松葉杖より前方の位置まで出します。

「小振り歩行」
大振り歩行と順番は一緒ですが、両足を出す位置が松葉杖より手前になります。
「片松葉杖歩行」
松葉杖・患側の足→健側の足の順番で前に出します。症状の改善により、2本から1本へ移行していきます。

④ 肘支持型杖
手順はT字杖や4点杖と同様です。違う点は、2本で使用する使い方もあるということです。

⑤ ロフストランドクラッチ
T字杖と同じです。又、肘支持型杖と同様2本で使用する使い方もあります。

(3)杖歩行の注意点

杖を使用する方は歩行に不安を持っていたり、足に怪我や何らかの障害を持っています。杖を使用しているとはいえ、やはり注意が必要です。ここではいくつかの注意点を上げていきます。

① すり足
患側の足は特にすり足になりがちです。床に躓き、転倒する恐れがあります。意識して足を高く上げ、踵から床につけるようにします。又麻痺などがある場合は、健側側にしっかりと体重移動を行うようにします。

② 目線
自転車でもそうですが、目線を下げているとバランスが悪くなります。又前を見ていないと人や障害物にぶつかる危険性もあります。しっかりと前方を見て進むようにします。

③ 段差
階段などの大きな段だけでなく、カーペットなどのちょっとした段差でもつまずくことはあります。逆に注意不足になり、小さな段差の方が危険かもしれません。

④ つま先の向き
つま先が外側へ向いていると、椅子やテーブルの脚、柱などの障害物にぶつかりやすくなります。つま先を進行方向にしっかりと向けて歩行すると安全です。

⑤ 目標物までの距離
目標物に近づいたとき、人はどうしても先に手を伸ばしたくなります。その時足がついていかず、離れた状態になると前傾姿勢になり転倒のリスクがあります。しっかりと杖・足が目標物に近づいてから手を伸ばすようにします。

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